「言っておきますが、拒否権は一切ありません。いいですか?」

この司会者の言葉に、広也が反抗する。

「何だよ拒否権が無いって!案内人に聞いたぞ?この対戦が一戦終わったら、元の世界に一旦戻れるんだろ?なら、警察に訴えてやる!」

…確かに、広也の言いたい事はわかる。
でも…警察なんて、こんな意味不明な世界じゃ、ちっぽけな蟻にすぎない。

まず、この話を警察が、信じるはずもない。

あたしがこの事を広也に言おうとした途端。

「殺しますよ」

司会者の、冷たい一言。

威圧感があって、冷や汗が流れる。
妙な悪寒が身体中にわたる。
「殺す」なんて言葉、普段ふざけて使うものなのに、なぜか、冗談には聞こえない。

静まり帰ったドームの中は、意識が遠のく様な、静寂にかられている。


もう、あたし達が生きる道は

優勝するしかないと

この静寂の中


皆、悟っただろう。