無口な上司の甘い罠

「今日子、これを受け取ってもらえないか?

・・・それとも、荻田の方が良くなったか?」


「ちがっ!」

「昨日だって、仕事でも、プライベートでもずっと一緒だった」

「・・・それは」

そう言った部長の目はとても悲しげで、胸がギュッとなった。



「それは、部長のせいです」

「…俺の?」

「…あんな綺麗な人と一緒で、他の社員がいるにもかかわらず、

いちゃついたりなんかするし・・・

居酒屋でバッタリ会えば、あんなことを聞かされるし・・・

もうショックで、どれだけ傷ついたか・・・わかりますか?」


…思い出しただけで胸が苦しくなる。

大好きな人が他の女性とあんな・・・

気が付けば泣いてて、それに気づいた部長は、

私の涙を指の腹で拭った。


「・・・勘違いさせて、ゴメンな・・・

苦しめて、悪かった・・・」


「・・・」


「…峰子さんは、北海道支社の重役の娘で、

何でか気に入られて、結婚したいって、言われたのは本当」