「いらっしゃいませ~」

店の中に入った途端、店員の威勢のいい声が聞こえた。


「この間、接待で連れてきてもらったとこなんだけどさ、

ここの飯、上手いんだぞ」


そう言って私の手を引いたまま隆盛は席に案内する。


「色気も減ったくれもないわね」

そう言う私を見て、隆盛は笑った。


「今日は、ヤケ酒だから、ここでいいんだよ」

「…バカ」

…本当、隆盛は、私の元気になる方法を知ってる。


「今日子、席あそ・・・こ・・・」

「・・・」

指差した隣の席に、思いもよらいない相手が。

私は急に立ち止まった。

隆盛も、まさかこんな所にいるとは思ってもいなかった。



…相変わらず、あの綺麗な女性を連れた部長がそこにいた。




「・・・帰ろう、隆盛」

「・・・あ、あぁ」



「…今日子」

部長が私達に気付いてしまった。

…それも、少し焦った様子で。