「一応、貴方の娘で跡取りですよ」
「はっお前でなくても、葵が居るのだからあいつに継がせればいいんだがな」
「っ!
…それだけは、嫌だと何度も言った筈です」
「知らんな」
女のあたしが跡取りなのは、この世界では珍しくは無いだろう。
だけど、この人はあたしに跡を継がせたくないらしい。
…きっと、女だから。ということだろう。
あたし達を産ませるだけ産ませた母を、直ぐに捨てるくらいの女嫌いだから。
「…まぁ、いい。
今日は挨拶に回る。来い」
「…分かりました」
…どうやら、今日もあたしの話をまともに聞いてくれることはなさそうだ。
「どうも、桜城(さくらぎ)さん。
ご無沙汰しています」
「どうも嵐川さん。
今日はお招き、ありがとうございます」
「いえ、こちらの身勝手な行動に付き合ってくださって…。
感謝します」
「いえいえ」
…自分にとって、利益があるであろう大きな会社の社長さんや、御曹司。
そんな人達にだけさっきまでの固い表情を崩し、愛想のいい笑顔を向けるこの人の横で、あたしも教えこまれた笑顔を浮かべる。

