蜜は甘いとは限らない。【完】




はぁ、本当適当な奴。


渡された紙を開いて目を通す。




“東丘総合病院 306号室”




稀浬の意外に綺麗なさらさらと書かれた文字に指を這わせながら読み、暗記する。





「...覚えた?」

「うん。
東丘だって、行こっか」




道、分かるわよね?

首を傾げて覚えたかと聞いてきた葵にあたしも分かるのか聞き返すと、ポンポンっと軽く頭を撫でられた。




「分かるよ」




...頭を撫でてふわり笑って言った葵は、あたしのことを本当に姉だと思ってるのだろうか。



とりあえず分かると頷いた葵からメットを受け取って被り、後ろに乗ると直ぐにバイクは動いた。




あたしがどこにも捕まっていない間に動くのはもはや葵のくせになっていて、落とされたくないあたしはバイクのケツを強く掴む。

腰を掴まないのは、なんとなく。




「ほい、とーちゃく」

「...寒い」





スピード狂とまではいかないけどそこそこな速さの葵のバイクはだんだんスピードを落として、病院の前に停まった。