蜜は甘いとは限らない。【完】





「稀浬?」

『あ、見つかった?』

「うん」

『なら門の前に来てー』

「ん」





いつも通りの短い電話を終わらせ、鼻歌を歌っている葵の近くに駆け寄る。





「葵、今日バイクで来た?」

「うん。乗る?」

「ん、乗せてくれると嬉しいかな。
あと門の所に来いって」

「OK」





バイク取ってくる。

そう言って屋上を出て行った葵に続いてあたしも屋上から出る。




...あたし謝るの苦手、っていうか嫌いなのにな。憂鬱。

そんなこと言ってたら、ダメなんだけど。



ゆっくり階段を降りて外の出ると、バイクに乗った葵と稀浬が一緒にいるのが見えた。




「ごめん、遅れた」

「ん、いいよ別に。
んでね、俺今日は行けないからさ、場所。これ」

「ん」





意外に俺、忙しいんだよね。

そう言いながら小さいメモ用紙をあたしに渡して、要らないウインクを残してさっさと学校に戻っていった。