蜜は甘いとは限らない。【完】





「あたしにさ、婚約者いるって言ったじゃん?」

「…葵のダチだとかいう坊っちゃんだろ?」

「ぶっ……こほん、そうそうそれ。なんだけどね?」

「そいつがどうしたんだよ」

「あたしの婚約者じゃなくなったの」

「っマジ?!」




ガシっなんて、効果音が付きそうな位強く肩を掴まれる。


何もそんなに力入れなくてもあたしは逃げないのに。


痛さでうぅ、と呻き声を漏らせば少しだけ力が弱まった。




「な、な、それ嘘じゃないよな?
お前に婚約者はもう居ないんだな?!」

「…うん」

「っしゃ!」




戸惑いながらも頷いたあたしを見て肩を掴んでいた手は離れ、ガッツポーズを作る。


…まさかそういう反応するなんて思わなかった。



その様子に思わず笑みが溢れる。