財布や色んな物が入っているこの鞄がなかったら、どうしようかと思った。




「それと、これを」

「?なによ、これ」




渡したケータイと引き換えの様に渡された黒い箱。


大きくも、小さくもないその箱はあまり重みを感じない。




「旦那様からのものです」




山中からの返事を聞きながら箱を開けると、中には白いケータイが入っていた。


これを、使えということね。




「それには旦那様と、明日会うお嬢様の婚約者様の番号が入っています。
それと旦那様の会社の番号も入っています」

「その3つだけ?」

「はい。
なにか不便でもありましたか?」

「言っても、どうせ叶わないのだから何も言わないわよ。

それで?用はそれだけ?」

「あぁ、そうでしたね」




用は、ケータイと明日のことです。