蜜は甘いとは限らない。【完】





「ほら、玄関が見えてきたじゃないですか」

「...もう、疲れた」

「鍵を開けて参ります」




よろしく。

そう言う前に、またまた大きなドアの横にあるボタンのあるところに歩いていった。



...暗証番号?




「番号、または指紋でドアが開くようになっています。
お嬢様と葵様、旦那様の指紋はすでに登録されていますので、」




この、ボタンの上にある画面に指を当てて音が鳴れば開いたという証拠です。



その言葉通り、暗証番号を押し終えたのと同時にカチャリと音がした。




「どうぞ」

「...えぇ、」



開いたらしいそのドアを開けた山中に言われ、ドアをゆっくりくぐる。


...へぇ



入ってすぐに見えたのは、意外に落ち着いた雰囲気のシックな玄関。

ただ、広すぎて部屋に見えるのだけれど。




「ここ、全てお嬢様のものです」

「...まさかここに1人で住むの?」

「はい。
使用人が数人住み込みで働きますが、ほぼ1人です」

「なんでそれだけなのにこんなに大きい家...。
まず、使用人なんて要らないわ」

「掃除や、家事はどうするんですか」

「それくらい自分で出来るわよ」