蜜は甘いとは限らない。【完】





「………様」





...ん、




「...お嬢様」

「......誰、」

「山中でございます」




意識を失っていたあたしが目を覚ましたのは、車の中だった。

ゆさゆさと肩を揺すられ瞼を持ち上げると、目の前にはあたしの顔を覗きこんでる山中。




「...ここは、」

「お嬢様が、今日から過ごしてもらう家でございます」

「家?」

「はい」




旦那様がお嬢様に用意された家です。



そそくさとあたしを起こした山中は車から降りて言った。

てか、なんで家なんか。




「ふざけないで、あたしは自分の家に帰るわ」

「もう、解約の手続きはいたしました」

「...は?」

「荷物はここに運んであります」

「ちょっと待って!!」



解約...?
あの家をってこと?

冗談じゃない。



そんなことしたら、葵が!!




「葵様のことでしたら、新しい家を用意しています」

「...なんでそんなに手間が掛かることをわざわざするの」

「そう、命じられましたので」