知らない内に自分の父親に操り人形の様にされていたことに、腹が立つ。



ギリッと歯を噛み締めれば余裕綽々の笑みを向けられる。


こんな男の、言いなりにはなりたくないが。




「…分かった。
もし姉貴が1滴でも跡取りの問題で涙を流すようなら。

俺が嵐川の跡取りになる」




これで、いいんだろう?

これが、言わせたくて来たんだろう?



そう言わんばかりに見れば、勿論だと口角を上げる親父。



……殴るな、落ち着け、俺。


この男を殴って不利になるのは自分と姉貴なのだから。

力み過ぎて震える手を隠す。




「…家に、着きましたよ」

「…あぁ、」




そうしていれば、寺島の家に行く前に住んでいた家の前に降ろされる。


あ、こいつらは寺島の存在を知らないのか。



なぜかそのことが自分が優位な立場に立てたような気がしてならなかった。




「…この話は、姉貴に絶対。するなよ」

「それは、お前次第だ。葵」