蜜は甘いとは限らない。【完】





「だって、姉貴は女だろ?」

「…女だからって、跡継げないわけがないでしょう?」

「姉貴、知ってるよな?
嵐川は代々男が継いでるって」

「なんで、葵が知ってるのよ」





それくらい、知ってるさ。




当たり前だ、と言わんばかりにあたしを見る葵に、どう反応すればいいのか困る。




だって、葵に跡を継がせるなんて考えたこともないし、嵐川のことも昨日知ったばかり。


なのに葵の考えについていけるわけがない。





「何、姉貴は俺に継がせたくないわけ?」

「当たり前、でしょ?
だってまだ葵は!!」

「“まだ”、じゃなくて“もう”、俺は高2だよ。
いつまでも子供じゃない」

「あたしからすれば子供よ」

「俺からすれば、姉貴のほうが子供だね」

「なっ!」





あたしが、子供?



あたしはちゃんと会社員として働いてる。

それに、葵と歳も離れてる。




それなのに、葵はなぜあたしを子供だと言うの?





「……なんて、そんなわけないだろ」

「は?」

「姉貴は子供じゃないよ。
でも、俺が跡継ぎを考えているのは嘘じゃない」

「…。」

「話は、それだけ?」