蜜は甘いとは限らない。【完】





嬉しいことに、あたしの部屋は葵の部屋の2つ隣のところにあるから、直ぐに移動できる。




だからこそ直ぐに移動しようって思えたんだけどね。




コンコン、




「葵、いる?」

「……姉貴?
いるよ、入って」

「うん」




良かった、葵今日は家にいた。


たまにバイクに乗って何処かに行くから、もし今日がその日だったらどうしようかと思った。




「昨日の話?」





葵の返事を聞いて部屋に入ったあたしに雑誌を読んでいたらしい葵が、バイク雑誌から顔を覗かせてあたしを見る。




なんだ、昨日眠たそうにしながら話してたから覚えてないかと思ったのに。





「うん、そうよ。
覚えてたのね」

「当たり前。
だって、話って父さんのことだろ」

「…そこまで分かってるのなら、話は早いわね。
あの人はあたしを捕まえて跡取りにするか、あたしを引きずり落として葵に跡を継がせるつもりよ」





要するに、あたしが言いたいことはあの人から逃げられないという事。





「…うん、父さんから直接言われた。
そのときはさ、俺何も答えなかったけど、」

「けど?」

「俺さ、姉貴に跡継がせるくらいなら俺が継ごうかなって考えてる」






え?






「…え?」





なに、言ってるの?