蜜は甘いとは限らない。【完】





プツ、





『……なんだ』

「…忙しい時にすいません。
舞弥です」

『それは分かっている。
用件はなんだと聞いてるんだ』





まさかとは思うが、明日のことか?
それとも、寺島さんのことか?




……この人は、なぜこうも鋭いのだろう。



まぁ、それ以外であたしが電話する理由もないけれど。





「はい。
明日、大事な用が出来てしまいました」

『大事?
俺の会社以外に大切な用があるのか?』

「……寺島さんのところのお嬢さんの、買い物を付き合う約束をしてしまいまして」





きっと嘘の理由を言っても頷いてくれないだろう嵐川さんに、どうせならと本当のことを言う。





寺島は、嵐川よりも上にいるし、許してくれるかもしれないし。




『……分かった。
だが、俺が呼び出した時はそちらの許しを得なくても会社に来い。

分かったな』

「はい」