「それじゃあ、おやすみ」

「…あぁ」





そんな寺島を見ないように襖を開け、部屋を出る。



皆はもう寝ているのか静かで暗く、冷たい廊下を歩く。




冬の冷たさとは違った廊下の冷たさが体に伝わって体の芯から冷えていくような錯覚に襲われた。




だけど、何故か熱を持ったままの唇に指を這わす。



(…意外に、柔らかかったな…)




って、ないないないない。



ごしごしと感覚を消すように唇を擦る。

擦り過ぎたせいか、少し唇が痛くなったけど、そんな唇をキュッと結んで自分用にと用意された部屋に入る。




モノトーンで作られたあたしの部屋は自分の好みの家具で揃えられていて、自分の家同様に落ち着いてしまう。




襖を閉めて黒のクローゼットを開け、灰色の上下のスウェットを取り出すと、ドレスを脱ぎ捨てる。