名前、まんまだ。




きっと、寺島の母親が付けただろう名前は、母親の愛情を感じた。




だって、この様子を見て寺島のジジイ...隆哉さんが付けたようには思えないし。





「...じゃあな」

「はい」

「もう来るなよ、クソ親父」

「また来てやるよ、クソ息子」




少し恥ずかしそうに立ち上がった隆哉さんはあたしの頭を撫でた後、寺島の方を見てニヤリと笑って部屋を出て行った。



シンっとなった寺島の部屋は嵐が去って行ったように静かだ。




「...お前、なんで親父と、」

「それじゃあ、帰るから」

「おいっ!!」




ガタンッ




「...帰れると、思うなよ」




...なに、ごと。



背中に感じる違和感に、動かない両手、両足。


そして目の前には、どアップの寺島の顔。




「何、してんのよ」

「何って、そのまま。
逃げないように」

「だからってっ、押し倒す奴があるか!!」




直ぐ目の前にある寺島の顔に怒鳴る。


今のあたしの格好は、両手を上に上げて転んでて、その両手を寺島に拘束されてる。

両足は踏まれてて、動かない。




「あ?
こうでもしないとお前、逃げるだろうが」

「当たり前よ!」