蜜は甘いとは限らない。【完】





「すいません。 今、連れて来ました」

「...その男か?」

「はい」

「...姉貴、この人。誰」





あたしが寺島のジジイに対して敬語で話しているのを聞き、気安くこの人に話しかけてはいけないと自分の中で判断したのだろうか。


直接聞くのではなく、あたしに聞いてきた。




「この人は、寺島の父親」

「は、父親?
てか、なんでここにいるわけ、」

「それは...」

「舞弥が拓哉のことを知っていたから、気になったんだよ。
まぁ、理由は大体分かったがな」





...は?




え、今から説明するために葵を連れてきたのに?
なにそれ、歩き損。




「俺にはもう、用はない?」

「あ、ごめんね葵」

「...いいよ」




それじゃあ、なんて言いながらまたゆっくりとさっき歩いてきたところを戻っていった。




「ははっ仲の良い姉弟だなあ。
お?妬いてるのか、拓哉?」

「妬いてねえよ、クソ親父」





そんなあたし達を見た寺島のジジイが笑って寺島の頭を叩き、からかう。


なに、親子でコントでも始めるつもりかしら。




「と、それで?
舞弥、お前の苗字が瀬崎と嵐川。
なぜ2つもあるのかを教えてもらおうか」





もちろん、詳しく。
少しでも誤魔化したら、分かってるよな?