蜜は甘いとは限らない。【完】





「そう、面倒。すごく」

「...ふーん」




どうでもいい。

とでも言うようにまた欠伸をする葵に苦笑する。




本当、周りに無関心なのはあたしと似てる。
そして、あの父親にも。





「...ここ、寺島の部屋だろ」

「(さん抜けてる...)うん。
だけどここに居るから」

「ふぁ...」

「...入るよ」

「うん」





まだ眠いのだろうか、三度目の欠伸。


まぁどうせ中に入ったら眠気なんてなくなるだろうけど。




寺島のジジイって、貫禄はすごくあるから。


ここのトップであり、大企業の社長だし。




なんて考えながらなるべく物音を立てずに襖を開ける。





「...___遅い」





ビクっ



うつらうつらと首を揺らし、瞑ってしまいそうな瞼を無理矢理持ち上げていた葵の肩が跳ねる。

瞼も、さっきとは違いパッチリと開いている。




...それくらい、寺島のジジイの声は恐ろしく低かった。