蜜は甘いとは限らない。【完】





なんだか、自分で話をこじらせたような気もするけど、とりあえずこの人に誤解されたままではイケナイと思った。






「…着きました」

「分かってる。ほら、降りろ。
えっと…」

「瀬崎、舞弥です」

「…瀬崎?いや、まぁいい。
舞弥、降りろ」

「もう降りました」




言うのは一度でいいのに。


名前を呼べなかったからか、2回言った寺島のジジイに呆れる。




そんなあたしの言葉に返事をせずズカズカと歩いて行く寺島のジジイ。


寺島は吃驚するくらい、この人に似ている。





「か、頭!なんで分家に…?」

「てめぇそこはおかえりじゃないのか」

「あ!
おかえりなせぇ、頭」

「おお。
んでここに来た理由は後ろのお嬢さんだ」





うわ、自己中。



くいっと親指で後ろにいるあたしを指す。


その指にそってあたしを見るのは剣くん。




「あ、姐さん!
おかえりなさい!」

「ただいま、剣くん」

「なんだあ?
こいつのこと知ってんのか」

「はい、だって姐さんは……モゴ」

「なんでもありません。
とりあえず冷えますから中に」

「…あぁ」