蜜は甘いとは限らない。【完】





「…だって、きっと貴方のよく知っている人ですので」

「俺が?」

「はい」





覚えがないのか、顎に手を当て考えている。

まぁ、無理もない。



だってこの人はあたしと寺島に接点があるとは思わないもの。





「寺島、」

「あ?
なんで急に俺の名前を呼ぶ?」

「違います。まだ続きがあります。
寺島は寺島なのですが寺島拓哉、の方です」

「拓哉?
あいつのことを知ってるのか?」





嵐川の跡取りである、お前が?




さっきまでの柔らかい目ではなく、鋭い目であたしを見る。




「やっぱり、貴方はアイツの父親。ですよね」

「…あぁ。
それより、なんで知ってる?」

「それは、寺島の家に行ってから話しませんか?」

「何故?」

「その方が、説明しやすいからです」





あたしを探るように見て、今は何も話す気が無いことが分かったのか、車を動かせて寺島の家に向かう。