蜜は甘いとは限らない。【完】





ていういか、これは行くしか選択肢はないでしょ。



後ろで睨んでるし、誰かさんが。





「なら良かった。
俺たちだけで勝手に決めたが、付いてきてくれなかったらどうしようもないからな」

「ふふっ
そんなことはありませんよ」





思ってないでしょ、そんなこと。



笑いながら自分の頭をかく寺島のジジイは、だんだんアイツに見えてきた。



うん、そっくりだ。




「では、行こうか」

「はい」

「あ...、ちょっと待ってもらえますか?」

「あぁ、いいよ」

「...舞弥、ちょっと来なさい」

「...はい」





少し強めにあたしの手を引き歩く寺島のジジイについていこうとすると、後ろからアルトの声が聞こえて足を止める。



...どうせ、相手様に迷惑をかけるな。
とでも言いたいんでしょうね。きっと。




「...お前、向こうに迷惑をかけてみろ。
即、葵を俺の跡取りにするからな」

「っ、」

「返事は」

「...はい」





足を止め嵐川さんのところに戻ると肩を掴まれた。


端から見れば肩を寄せているだけに見えているのかもしれない。

でも実際は、あたしの肩を強く掴んでいるだけ。




元々つり上がった目をさらにつり上がらせてあたしを睨む。




「じゃあ、娘をよろしくお願いしますね」