「ねぇ、光。空くんって、彼女いるか知ってる?」
クラスメイトでそれなりに仲の良い千秋が、突然尋ねてきた。
「空?いない…んじゃない?どーしたの?」
なぜか解らないけど、ドキドキしていた。
「誰にも言わないでね?うち、空くん狙おうかなぁと思ってるんだっ!!」
「…ぇ…」
「この学校ではかなりレベル高い方だとは思うし…フリーならチャンスじゃない?」
まくし立てるように語る千秋。
「確かに…そだねッッ!頑張れ千秋!!」
笑顔が引き攣ってないか、不安だった。
なんだか、思ってもない事を言った様な気がする。
自分がなんで、頑張れなんて言ったのか、分からなかった。
なんだか、熱がある時のように、視界が定まらなかった。
眩暈…?

でも、なんで…?
あたしは別に、空のことが好きなわけじゃない…
友達としては、好き、だけど…
それって、恋愛感情の好き、じゃ…ない…よね?
無い…はず、だけど。

こんなに自分で自分の事を解っていないんだ、と思ったのは初めてだった。
自分が、空に抱いてる気持ちが分からない。
この[好き]は、友達としての[好き]なの?
それとも…。

もし、千秋と空が付き合う事になったら…
そう考えると、胸が痛くて…物語りで使われている、[胸がはり裂ける]という言葉の意味がわかったような気がした。