大っ嫌いにさよならを


 エンドロールとともに、物悲しいけれど優しくてあたたかい歌が流れていた。

 あちらこちらからは鼻をすする音が聞こえた。俺は椅子に深く腰掛け、回想のようなエンドロールをぼんやり観ていた。

 二時間越えの長く、だけどあっという間に終わってしまった映画。徐々に照明が明るくなり、客が順々に立ち去っていく。

 茉莉奈は目頭を押さえ、軽く伸びをした。俺の方を向くと、「翔、泣いてるの?」と、含み笑いを浮かべながら言った。

「うるせ、自分だって目が真っ赤だぞ」

 目元を袖で拭い、俺がそう言うと茉莉奈も目を拭って椅子に座り直した。エンドロールを映し終えたスクリーンと向きあう。

 そして、ため息のように息をゆっくり吐いて、

「大好きな人とずっと一緒に生きることができなくとも、最期にああやって側に居られたら、幸せなんだろうね」

と、不意に呟く茉莉奈。きっと、ラストシーンの少女とあの犬のことを言ってるのだろう。

 人間よりもはるかに寿命の短い犬。残された少女は、どうか天国に届きますようにと美しい歌を捧げる。

 それを見せられたこちらの涙腺は緩みまくってしまった。思い出すと、さらに目が熱くなり、鼻の奥がツンとした。