大っ嫌いにさよならを

 〈5〉


 ランドセルを背負う肩を並ばせて歩く、朝の登校。

 その日の給食のメニューなんかのくだらない議論から始まるあいつとのそれは、俺にとって教室に机と黒板があるように日常で、特別でもあった。

「やーい、朝からいちゃいちゃしてやんの!お前らつきあってんのかよー」

 …こういう冷やかしも、またしかり。

 決まって、何も言い返せない俺の変わりに声をあげるのは茉莉奈だった。

「うるさいわね!心配しなくとも、あんたなんかと一緒に学校行ってあげないんだから」

 俺はその言葉を聞く度、言い表せない嬉しさが込み上げた。

 しかし、高学年にもなると俺と茉莉奈が一緒にいることは、周りの子たちにとっても日常となっていて冷やかしはなくなっていた。

 もちろん、冷やかされて嬉しかったとは思わなかったけど、茉莉奈にとっての俺が他の子と同じ、特別でもなんでもない存在だと知らされた気がした。

 漠然と、この関係が大人になっても続くのではと思う所は世間を知らない馬鹿な小学生らしかったと高校生の俺が笑う。

 一般的な人の寿命における、人生の年月のほんの少しの間に、俺とあいつとの関係は変わったのだから。