大っ嫌いにさよならを


「ま、茉莉奈のことをストーカー呼ばわりしたのは、ごめんと思ってる。俺、またお前に会えてほんとは嬉しかった。会いに来てくれたのも。迷惑だなんて言ったのも、素直になりきれなかったというのか…」

 しどろもどろに、決まり悪く話す俺を見上げた茉莉奈は微笑を浮かべているが、その目は真剣なものだった。

 俺は、その目に捕らえられたような感覚を覚えた。

 きっと茉莉奈は、俺からの言葉を待っているのだ。こんな俺のことを待ってくれているのだ。

 カラカラに渇いた喉に構わず息を深く吐いて、吸って、俺は言った。

「俺の…側に居てほしい。俺、茉莉奈が好きなんだ」

 握り締めていた手に力を込めて震える声を出す。俺は、ゆっくりと茉莉奈に顔を近づけさせ、目を閉じた。

 昨日にはなかった緊張と気恥ずかしさで、打ちつける鼓動のリズムが上がっていく。

 そうして、一瞬だけ重なった唇は、俺の好きないちご味の甘い味がした。

 少しぎこちなく離れた俺と茉莉奈は、目を開けて顔を見合わすと、タイミングを同じくして笑っていた。

「やっぱ甘いね、甘過ぎる」

「二人とも、さっきまで飴舐めてたからな。そりゃ甘いわ」

 そう言って、もう一度だけキスをする。冷たくなってきた秋の風が、火照った熱に心地よかった。