茉莉奈はブランコから立ち上がった。そして、隣まで来ると俺の左手を取って自分の右手を絡ませた。
「もっと早く、翔への気持ちを気づいておけば良かった。それなら、もっと、ずっとこうしていれたかもしれない」
耳をくすぐるような言葉に、俺は口角の筋肉が緩むのを止められない。
「これから、ずっと、毎日でもこうすればいいじゃん。茉莉奈は…その、俺の、彼女だろ?」
問いかけるように言った俺の心臓は、さっきからうるさいほど高鳴り続けている。
まだ自分に自信を持てないのもあるし、自分で発した少し恥ずかしい台詞の照れもある。
茉莉奈はそんな俺に寄りかかって、目を閉じた。
「これから、ずっと…翔の側に居ても良いの?翔の彼女に、なっても良いの?」
すると、俺の知らない茉莉奈が現れた。いつになく弱気な茉莉奈のせいで、俺は一抹の不安を覚えた。
茉莉奈が、その言葉とは裏腹にどこかへ行ってしまいそうな気がしてしまった。
…しかし、ふと俺はこの間まで茉莉奈の事をストーカー呼ばわりしていたのを思い出す。
ああ、我ながら馬鹿だ。と、本当に自分の言動を悔いる。
茉莉奈を不安に、弱気にさせたのは他でもなく俺自身だったのだ。



