大っ嫌いにさよならを


「ほんと、私たちって馬鹿だったなぁ」

 しばらく無言だった公園に、静かな声が響く。茉莉奈が、落ちたピンク色の飴を見つめながら呟いていた。

 俺が聞き返すと、

「…友達が、翔のことが好きって言ったの。だから私が、自分から協力してあげるねって言ったの」

と、ポツリポツリ、あの頃のことを話しだした。

「翔の好物が何なのかとか、好きな歌手とか、好きなゲームとか…あと、気が弱い所があるけど実は優しい所もあるとか、とにかく翔のこと教えてあげた。でも…」

 茉莉奈は一旦、ひと息ついて俺を見上げた。

「その時、知っちゃったの。ああ、私、翔が好きなんだーって」

 はにかむ茉莉奈は、照れたように前髪をいじった。

 そのひとつひとつの仕草がどうしようもなく可愛らしくて、こっぱずかしかった。

「でも友達に、やっぱり私も好きだから、協力できないなんて言えなかった。そしたらさ、自分のことをどう思ってるか聞いてほしいって頼んできてくれて」

 はぁ、とため息をして茉莉奈は弱々しく笑う。

「あんな些細な喧嘩のせいで、今まで離れてたなんて本当に馬鹿みたい。あーあ、もっと早く仲直りしとけば良かった」