言ったそばから不安になる俺に、場違いな笑い声が聞こえだした。何事か!?と茉莉奈を見てみれば、あいつはケラケラと上機嫌に笑っていた。

 おまけに自分の足をばしばし叩くまで、笑い転げているではないか。

「…おい、笑うな馬鹿。俺は真剣なんだぞ」

 恥ずかしいのとムカつくのでそう言ったら、一層笑い声を上げて腹をよじらせているので、もはや苦しそうだ。

 極めつけは、笑いすぎて手に持っていた食べかけの棒つきの飴を地面に落としてしまっていた。

 それさえも可笑しいのだろう、「落ちたし!」と言ってまた笑った。

 俺もつい笑ってしまった。そうすると、止まらなくなって俺まで腹をよじらせて笑った。

 暮れていく閑静な住宅街の中に佇む公園に響くふたつの笑い声は大層、奇妙だったろう。

 そして、ようやっと笑いが止まった時には月が上り、小さな粒ほどの星がキラキラ輝いていた。

 遠くの方では、夕日が残した橙色が見えた。

 それら全部が、懐かしかった。いつも見ている風景のはずなのに懐かしく感じ、くすぶったい気持ちが俺を包んだ。