俺は溶けて小さくなっていく飴を噛んで飲み込み、棒だけになったそれを公園の入り口近くにあるゴミ箱めがけて投げた。

 どうせ入らないだろうと思いつつその行方を追っていると、カンッという軽い音の後、ゴミ箱の中へと吸い込まれていった。

「さすがバスケ部。あ、今は違う?」

 俺は「うん」とだけ頷いて、隣の茉莉奈の横顔を盗み見る。すると茉莉奈は俺の視線に気づいたのか、こちらを向いた。

「翔?」

 首を少し傾けて俺を見る茉莉奈に、鼓動が暴れる。俺は目をそらして口を開けた。

「なぁ、覚えてる?中学一年の、夏にさ、俺たち喧嘩しただろ」

「……うん」

 若干の間を開けて言った茉莉奈の声は、幾ばくか沈んだものだった。

 それはまるで、あの事は忘れていたいという茉莉奈の気持ちのように聞こえた。

 けど俺は、それに気づいていない体で喋り続ける。

「あの時はお互いの悪口とかいっぱい言って、それから目も合わさないほど仲が悪くなってそのまま夏休みに入って。それまでは必ずどっちかの家で一緒に夏休みの宿題してたのに、その年からなくなっちゃったよな」

「…一緒にって言っても、いつも私の答え見て写してただけじゃん」