「翔はさ、不器用だけど、嬉しい時とか悲しい時とか何も言わなくても顔に出てる、素直な所が良い所なんだよ。ま、言葉足らずが玉に瑕だけど」

 将らしくない優しい言葉に、俺は目をそらす。

 朝の予鈴がスピーカーから流れた。

「せっかくのチャンス、逃すなよ。これ逃したら、死ぬまで童貞ショウだぞ」

 …ああ、やっぱこういう奴なんだ。

「それでも良いんだぞ?俺たち、同志じゃないか!」

 鉄之助と同じにされたくないわ。

 俺は鉄之助のケツを足で蹴飛ばして、早く席につくよう促した。

「口うるさい奴らだな、ほんと」

 担任が教壇に立って、出席を取っている間、こっそりと将と鉄之助を見る。

 将は優等生らしく背筋を伸ばしているが、鉄之助は猫背になって俺に蹴られたお尻を気にしている。

 俺は急に可笑しくなってきて、吹きだしてしまうのをこらえた。

 俺の友人たちは、アンバランスなようでバランスが成り立っているようだ。シーソーで例えるなら、端と端に将と鉄之助がいて、真ん中に俺がいる。

 こう思うのが、しっくりする気がした。そうだろう?