いまいちこの状況に頭がついていかないけど、あたしはとりあえずぎゅっと霧谷くんに捕まる。
「あっ、流!」
「萌!?」
「兄貴のあんな顔初めて見ましたよ〜」
峰くんやゆっちゃんの声が聞こえたけど、すぐにその声は聞こえなくなった。
多分、霧谷くんがみんなから離れていってるというのもあるのかな。
でも、それ以上に周りからはざわざわとした声がする。
そのほとんどが女の子の声……霧谷くん、かっこいいからなぁ。
そっと霧谷くんの顔を見上げてみる。
こんなにかっこいい人があたしのか、彼氏なんだ……
………どうしよう。恥ずかしくなってきちゃったよ。
顔に熱が集まるのが嫌でも分かる。
それを隠すようにまた霧谷くんの胸に顔を埋める。
そんなあたしを見て霧谷くんが笑って見ていたなんて、今のあたしは気づかなかった。
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「ここらへんでいいか……」
霧谷くんが来たのは校舎裏のあまり目立たないところ。
文化祭のせいか人はあたしと霧谷くんしかいなかった。
そっと霧谷くんはあたしをおろす。
今さらだけど、あたしは霧谷くんにお姫さま抱っこされていたらしい……
うぅ……ますます恥ずかしいよぉ……
「あつ……」
シュル、と霧谷くんはネクタイを緩めて近くにあったベンチに座った。
そんな姿にどこか色気を感じてあたしの心臓がどきりと跳ねる。
あらためて見るけど……やっぱり執事服、似合ってるなぁ。
ぼーっと見ていると霧谷くんがあたしを見て不思議そうな顔をした。
「萌、ぼーっとしてどうしたの?」
「へっ!?な、なんでもないよ!!」
ぶんぶんとあたしは頭を振る。
だって、まさか霧谷くんに見とれていましたなんて……絶対に言えない。


