「全然よくねぇ。こんなの着せやがって……」
霧谷くんは舌打ちをして峰くんを睨む。
峰くんはへっちゃらな顔をしてるからあまり効果はなさそう……
「いいじゃん、兄貴。似合ってるし」
「優……来てたのかよ」
「陸真サンに誘われて」
いいもん見れたなぁ〜、と優くんはにやにやと笑う。
うん……確かに霧谷くんかっこいいし、いいもの見れたよね。
と、一人顔に集まった熱を冷ましながら納得する。
「ね?萌サンもそう思いますよね?」
「う、うん。そうだね」
ぽんと肩を叩かれて横を見ると、優くんの顔が思っていたより近くて少し心臓がはねてしまった……
「優、離れろ」
「きゃっ……」
ぐっと引かれたかと思うとあたしは再び霧谷くんの胸の中にいた。
あたしの顔が真っ赤になったのは言うまでもない……
「何、兄貴、ヤキモチ〜?」
「うるせぇよ」
けらけらと笑う優くんの声が聞こえる。
でもあたしは自分のことでいっぱいで、霧谷くんと優くんの話はあまり聞こえなかった。
い、いつまでこの状態なんだろう……
ものすごく恥ずかしいよぉ……
せめて自分の真っ赤な顔を隠そうと、あたしは霧谷くんの胸に顔を埋めた。
「、萌?」
そんなあたしの行動に気づいたのか、頭の上から霧谷くんの困惑したような声が聞こえる。
「萌、どうした?」
「…………」
へ、返事を返せるほどの余裕なんてないよ〜〜!
その代わりあたしは霧谷くんの服を掴む力を強くする。
め、迷惑だったかな……離した方がいいのかも……でもやっぱり恥ずかしいよぉ。
どうしよう、と混乱した頭で考えていると、霧谷くんがくすりと笑う気配がする。
そしてふわりと体が浮く感覚がした。
「へっ、きゃあっ!?」
な、何っ!?
「捕まって、走るよ」
「え、え!?」


