「あぁ、そう言うこと」
ゆっちゃんも納得したような顔をしている。
な、何か分かったのかな?
というか、優くんの言ってた王子って誰なんだろう?
「おぉ!夕希ちゃん、マジその格好似合ってる。さすが俺の惚れた子!!」
「うざいわよ、峰」
「もしかして照れてる?」
「逮捕するわよ?」
「夕希ちゃんになら本望だね」
にっこりとゆっちゃんに笑顔を向ける峰くん。
口ではあんなこと言ってるけど、ゆっちゃん、嬉しそう……
くすり、と自然と笑みがこぼれる。
でも、いいなぁ…
「ねぇ…峰くん。霧谷くん知らない……?」
「あ、流?」
「うん。朝以外に姿見てなくて……場所も分からなくて……」
峰くんも、知らないのかな……?
やっぱり、忘れてる……?
そう思ったとき、教室にいる人たちから小さく声があがった。
何だろう?と思いそちらに目を向けて、あたしは目を見張った。
扉に軽く凭れかかるように立っている一人の男子。
白いシャツに黒いジャケットとネクタイ。
同じ色のすらっとしたパンツに革靴。
真っ黒の髪はセットされていて少し遊ぶようにはねている。
その格好はいわゆる……
「……執事?」
あたしの声に反応したようにその男子はこちらに目を向けた。
ぱちりと目が合う。
…………え?
驚きでぽかんとしてしまったあたしと違って、その男子はつかつかとあたしの方に来てあたしを抱きしめた。
その瞬間回りの女子からは『きゃーっ!!』と悲鳴が上がった。
いつもと同じ安心できる体温。
ふわりと香る香水の香り。
「…萌……」
あたしの耳元を掠める大好きな声。
「……霧谷、くん?」
そう呟くとあたしを抱きしめる力が強くなった。


