言い合う二人をあたしはぼーっと見ていた。
なんか……この光景違和感を感じるなぁ。
普段霧谷くんはゆっちゃんとこんな風に話さないからかな?
あぁ、納得。
…………じゃない!!
こんなにのんびり見ている場合じゃなかった!
「ゆ、ゆっちゃん、違うの!!優くんはあたしを助けてくれただけなの」
急いでゆっちゃんの手をとって言った。
「さっきは霧谷くんのことを話してただけで……」
「霧谷?」
少し眉を潜めてゆっちゃんは優くんの顔を改めて真っ直ぐ見た。
「……どこかで見たことあると思ったら、あんた、霧谷にそっくりね」
「それは兄弟ですから。
弟の優です。誤解がとけたところでこの手錠外してくれますか?」
「へぇ……霧谷、弟なんていたのね」
ゆっちゃんは警戒がとけたのか優くんにかかった手錠を外した。
「あたしは相田 夕希。さっきはごめんなさいね」
「あ、あなたが夕希サン?陸真サンから話は聞いてますよ」
にこりと笑った優くんの顔を見て、ゆっちゃんはあからさまに嫌な顔をした。
……そんなに峰くんのこと嫌いなのかな?
お似合いなのに……
「あ!ここにいたんだ萌ちゃんに夕希ちゃん。
もう今日は終わりでいいよ」
「え?」
クラスの子に言われて時計を見ると、すでにあたしの働く時間は過ぎていた。
「うん、分かった。ありがとう」
「どういたしまして。でも二人とも、衣装は着たままで過ごしてね!」
そう言い残してその子はクラスの方へ戻っていった。
「萌、どうする?」
「……どうしよう?」
今日は霧谷くんと回る予定だったけど、霧谷くんの場所は分からないし……
「霧谷くん……」
忙しくて考えないようにはしてたけど……
忘れてたり、しないよね……?
……不安になってきてしまった。


