大好きなんです




最初はお客さんもまばらだったけど……



「萌ちゃーん!」


「はーいっ」



今は死ぬほど忙しい!!


みんなくるくると目が回りそうなぐらい動いている。


それはあたしも例外じゃなくて……


さっきからあっちこっち行ってお客さんの相手。


もうへとへとだよぉ。



でもみんな頑張ってるんだもん……あたしも頑張らないと。



気合いを入れ直して、あたしはオレンジとコーヒーの乗ったトレーを持ってテーブルに向かった。




「お待たせしました」



にこりと笑顔を浮かべてジュースをテーブルの上に置く。



あ、この人たちの制服見たことあるかもしれない。


確か少し離れたところの高校の……わざわざこっちまで来たのかな?


大変だなぁ……


そんなことを考えながらジュースを置いて戻ろうとすると、二人いたうちの一人にその手を捕まれる。



「え?あ、の……」


「キミ、かわいいねぇ〜。名前、なんて言うの?」


「ご、ごめんなさい。まだ仕事があるので……」


「いいじゃん、名前ぐらい教えてくれてもさ」


「えっと……」



手を振りほどこうとしても全く効果がない。


ゆっちゃんにこういうときは名前とか個人情報は教えちゃだめって言われてるし……


でも、どうしよう……まだ仕事残ってて忙しいのに!


どうしてあたしにトラブルが来るの!



「ごめんなさい。仕事がまだあるので…放してくれませんか?」


「じゃあ名前教えてよ」



うぅ……しつこいよぉ……し、仕方ないよね?


名前ぐらいなら大丈夫かな……?



「えっと、あたしは……」



そのまま名前を言おうとすると、横から出てきた腕があたしの手を捕んでいた手を叩いた。


ばちん、と少し大きめの音がする。



え?と思ったときにはあたしの手は再び捕まれていた。