それにしても……
集合時間になってもうみんな来たけど、霧谷くんは峰くんといなくなってからまだ帰ってこない。
何か、あったのかな?
「どうしたの、萌。そんなにソワソワして……」
「うん……」
緊張してるの?とゆっちゃんは手錠をくるくると回しながら聞いてくる。
「そ、そんなんじゃなくて……!」
「じゃあ霧谷?」
「う……」
図星か……とゆっちゃんはにやりと笑みを浮かべる。
「確かに遅いわね。峰は違うクラスだから分かるけど」
「うん……」
霧谷くん…大丈夫かな。
「霧谷なら平気でしょ。大方、嫌がる霧谷に峰が無理矢理着させてるんじゃない?」
「そうかな……」
「そうよ。同じ心配するぐらいなら、今は自分の仕事の心配しなさいよ」
「あぅっ……」
ぱちん、と軽くおでこを叩かれる。
…そうだよね。霧谷くんのことは心配だけど、今はクラスのことを考えないと。
「うん……ありがとう、ゆっちゃん。あたし、頑張るね!」
「どういたしまして。ほら、もう始まるわよ」
「えっ!?あ、ほんとだ…」
知らない間に先生も来ていてみんな開店の用意をしていた。
教室から外を覗くと学校以外から来た人たちもたくさん来ている。
段々と賑やかになっていく廊下の音を聞きながら、あたしとゆっちゃんは顔を見合わせた。
「忙しくなりそうね」
「…だね」
少し苦笑を漏らして、あたしとゆっちゃんは自分の仕事に取りかかった。
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「萌ちゃん!オレンジとコーヒー三番のテーブルね!」
「うん、分かったよ!!」
「あー!!クッキー切れちゃったよ?誰か手空いてる!?」
「それならあたしが取ってくるわ!」
「夕希、よろしく!」


