大好きなんです




霧谷くんの衣装なんだろう……袋に入ってて分からないなぁ。


まぁ、あとで分かるよね。



「おはよう。霧谷くん」


「…………」



な、何?


じろじろとこの格好を見られる。



似合ってないのかな……そうだとしたらちょっとショックかも……



「今日の萌、食べちゃいたくなるぐらいかわいいでしょ?」



にやにやとしながらゆっちゃんは霧谷くんを肘でつついた。


というか食べちゃいたくなるぐらいって……あたし、おいしくないと思うけど。



「……そうですね。本当に、」



すっと自然な動作で霧谷くんはあたしの耳元で囁いた。



「食べちゃいたくなりました」


「…っ!?」



甘い響きを持ったその言葉は、あたしをドキドキさせるには十分なもので……



「顔、真っ赤ですね」


「う……」



霧谷くんは悪戯が成功した子供みたいに笑った。



こうなるって分かっててやったくせに……


ついちょっと睨むように見てしまう。



「…そんな上目使いで見るのはやめて下さい」


「へ?」



上目使い?睨んでいるつもりだったんだけど……



「まぁまぁ。二人でラブラブするのはあとでいいじゃん。流はとりあえず着替えて来いよ」



峰くんが霧谷くんの背中を押すように教室を出ようとする。



「あれ着たくないのですが」


「何言ってんの。あっちの方が今日一日桃ちゃんと一緒にいてもおかしくないって」


「…………」


「はい決まり。さっさと行って帰ってこようなー」



二人は何か話をしながら扉の向こうに消えていった。



霧谷くんも峰くんも何だかんだ言って仲良しなんだなぁ、と思い、くすりと笑みが溢れた。



「何笑ってるの?」


「ううん。なんでもないよ」



とは言ったものの、しばらく一人で笑っているとゆっちゃんに不思議そうな目で見られました。