大好きなんです




峰くんが、霧谷くんの衣装を……?



「おまっ、はぁ?」


「実は、衣装の発注の紙にたまたま流の名前見つけてさ。変えちゃった」



てへっ☆と笑う峰くんを霧谷くんは無表情で見ていた。



「……萌、相田。先帰ってて」


「え、えぇ。分かった。行くわよ、萌」


「う、うん…」



今の雰囲気には誰も逆らえないと思う。


幼馴染みのはずの峰くんさえ少し顔が青く見えるような……


その顔には、置いていかないで!と書いてあったけど、あたしは心の中で謝りながらゆっちゃんと教室を出た。



その後、教室に戻ってきた霧谷くんはいつも通りだったけど、帰りに見かけた峰くんは霧谷くんを見るたび笑顔がひきつっていた。


結局何があったんだろうね、とゆっちゃんと首を傾げていたけど、霧谷くんに聞いても何も答えてくれなくて……


何も分からないまま明日が文化祭当日になった。



「もう明日だね、文化祭」



あたしと霧谷くんは手を繋いで帰り道を歩いていた。



「萌は午前中で終わるんだっけ?」


「うん。霧谷くんは接客じゃなくていいなぁ…」



霧谷くんは当日の材料や教室を準備する係なんだ。



「当日はコスプレして過ごさないといけないけどね」


「だね」



くすくすと笑っていると霧谷くんはじろりとあたしを見てきた。


峰くんに変えられた衣装を着るのがすごく嫌みたい。


結局なんの衣装か教えてくれなかったからなぁ。


どんな衣装か、少し楽しみでもあるんだよね。



「ねぇ、霧谷くん。えっと…明日の午後は一緒に回ろうね」


「もちろん。心配なら指切りでもする?」


「そ、そこまで子供じゃないもん!」


「はいはい。分かってるよ」



くすくすと無邪気に笑う霧谷くんに心臓が音をたてる。



「じゃあ、また明日ね」


「また」



明日はゆっちゃんと約束して、早めに学校に行くことになってる。



「ふふ…楽しみだなぁ」



今日は早く寝ないと、と思いながらあたしは家に入った。