十月になり、あたしたちの高校にもやっと文化祭の季節がきました!



「えへへ……」


「何笑ってんの?」



霧谷くんと二人きりの帰り道、あたしは文化祭が楽しみで仕方がなかった。



「文化祭、楽しみだな〜と思って」



にこにこと隣にいる霧谷くんを見上げる。



「ふーん……」


「??」



霧谷くんは楽しみじゃないのかな?


さっきから少し不機嫌そう……



「今は俺と一緒なのに、萌は俺より文化祭のこと考えるんだ?」


「えっ!!」



少し拗ねたように言う霧谷くんに胸がきゅんとする。



最近の霧谷くんはこんな風に拗ねたり、意地悪な顔を見せたり……いろいろな顔を見せてくれる。


そりゃ前から霧谷くんのことはなんでも知りたかったし、嬉しいけど……



正直に言うと、心臓がもちません。



「だ、だって、文化祭だし……年に一回のお祭りだよ?」


「ふーん」



すたすたと霧谷くんは先に行ってしまう。



「そっ、それにね……!!」



たたた、と小走りで霧谷くんのあとについていき、勇気を出して霧谷くんの手に自分の手を滑り込ませた。


触れた瞬間、ぴくりと少し反応する霧谷くん。



はっ、恥ずかしいけど、ちゃんと言わないと……



「あたし、好きな人と一緒の文化祭…ずっと憧れてたの……!
だから、凄く嬉しくて……」


「…………」


「え、えっと…霧谷くん……?」


「…はぁ……」



た、ため息つかれた……!?



「や、やっぱり一緒に回るのはだめ…?」



そう、だよね……勝手にあたしが一緒に回れると思ってただけだもん。


急にしゅんとした気持ちになってしまう。



そんなあたしの気持ちを察したのか、霧谷くんは繋いでいた手にぎゅっと力を入れた。