どうしよう……あたし、何かしちゃったのかな。
どうすればいいか分からなくて、つい悪いことを考えてしまう。
…………あ。
ふと、優くんに言われたことを思い出す。
んー……でも、本当に大丈夫なのかな。
いや、やってみる価値はあるのかな。
でも……かなり恥ずかしい、かも。
じっと霧谷くんの後ろ姿を見つめる。
「…霧谷くん」
「……何?」
やっぱり、振り向いてくれないな。
あたしは霧谷くんに気づかれないように顔を耳元に近づけた。
「流くん…大好き……」
できるだけ色っぽく、囁くようにそっと言葉を紡いだ。
…っ、これ、かなり恥ずかしい。
絶対顔赤いよ……
「っ、萌っ!?」
「へ?」
ばっ、と耳を押さえて霧谷くんは振り向いた。
その顔は驚きに満ちていて、ほんのりと頬が赤くなっていた。
「霧谷くん、顔…」
「ちょっ、萌、見ないで」
霧谷くんは再び顔をあたしから背ける。
………かわいい。
優くんの言ってたこと、本当だったんだ……
『兄貴の耳元でなんか囁くといいですよ』
なんか、無償に霧谷くんがかわいく見えてくるなぁ。
くすくすとつい小さく笑うと、霧谷くんがまだほんのりと赤い顔であたしを見た。
「何笑ってんの?」
少し不機嫌そうな声も、今は全然怖くない。
「んー……」
くすくす笑いながら、あたしはぎゅっと後ろから霧谷くんに抱きついた。
「流くん、大好きだよ」
初めてのお宅訪問は、霧谷くんのことをいろいろ知られた日になりました。
「萌、俺をからかうとか、それなりの覚悟あるよね?」
「へ!?ちょっ、霧谷くん!?」
Fin.


