やっと唇を離したと思ったら、霧谷くんはあたしを抱き上げて、和樹くんにどこか挑発的な笑顔を向けた。
『分かった?萌は、俺のだから』
「っ!!」
だめだ……物凄く恥ずかしい。けど……凄く、嬉しい。
霧谷くんはあたしを抱き上げたまま部屋を出て行った。
「はい、終わり〜」
峰くんの言葉とともにテレビの画面も真っ暗になる。
「桃ちゃん大丈夫?顔真っ赤だよ〜」
「うっ…あ……」
なんて答えればいいのか分からない。
いろいろな感情がごちゃ混ぜになってて、言葉にできない。
「これを昨日、ナマで見ちゃったんだから。萌に凄い噂とかできるかもしれないわね〜」
「えぇ!!」
困る!恥ずかしい!!
あわあわと一人でどうしようか焦っていると、ふわりと優しい温もりがあたしを包んだ。
「え……?」
あたし、抱きしめられてる…?
「悪いけど、萌と二人きりにしてくれる?」
後ろから聞こえる声に尋常じゃないぐらい心臓が跳ねた。
だ、だめ!今はだめ!!
どんな顔して霧谷くんを見ればいいのか分からない!!
ゆっちゃんたちに救いを求めるけど、あたしと霧谷くんの顔を見比べてにやりと笑うとそのまま教室を出てってしまった。
しかもご丁寧に鍵まで……
うっ、…薄情ものぉ〜〜〜!!
「萌」
「……っ」
耳元で囁かれるみたいに名前を呼ばれて体がぴくりと跳ねる。
顔も、体も……熱いよ。
「こっち向いて」
「むっ、むり……」
さっきのテレビとか、霧谷くんの温もりとか、敬語じゃないところとか……
全部にドキドキして心臓が壊れそう。


