「送ってくれてありがとう」



まだ多分、顔は赤いと思うけどさっきの会話でだいぶ緊張がとけたのか、自然に笑うことができた。



「どういたしまして」



それじゃ、と言って霧谷くんは来た道を戻っていく。



なんか…寂しいなぁ……



しゅん、とした想いの中あたしも家に入ろうと霧谷くんに背を向けた。



「萌」


「えっ?」



すぐ後ろに聞こえた声にびっくりして振り返るとちゅっ、という軽いリップ音がして、温かいそれはすぐあたしの唇から離れていった。



「え、えっ……?」



びっくりし過ぎてあわあわと意味不明に動いてしまう。



「寂しそうな顔、しないで下さい」


「……っ!」



き、気づいてたの…?



「離したくなくなりますから」



するりとあたしの髪を一束すくって、霧谷くんはそれにキスをした。



「…ぅ、あ……!!」



いきなりの甘いスキンシップにくらくらしてしまう。



「また明日、学校で」


「う、ん……」



ふわりとやわらかく笑ってから、今度こそ霧谷くんは来た道を戻っていった。





霧谷くん………






「甘すぎるよ……」






まだ、顔の熱は引いてくれない。




「はやく、明日になればいいのにな……」




霧谷くんの後ろ姿を見ながら、あたしはそう呟いた。