「萌、まだ怒ってるんですか?」


「うぅー……」



違うんです。怒ってるんじゃなくて、恥ずかしいんです。



ゆったりと歩きながら今、あたしと霧谷くんは一緒に帰っている。



あのあと、あたしの悲鳴を聞いた峰くんは戻ってきてその……き、キス……を遮ってしまったことを謝りに来たけど……


カアァ、と頬が熱くなる。


ど、どうせなら戻ってきてほしくなかったよ、峰くん。



その峰くんと言えば、本当は霧谷くんと帰る予定だったけど、霧谷くんに怒られるのは嫌だから、と言って先に帰ってしまった。



はぁ……あんなところ見られて、もの凄く恥ずかしいなぁ。



ちら、と霧谷くんを見ると、彼はいつもと変わらない涼しい顔。



霧谷くんは、恥ずかしくないのかな……?



「萌、家はどこですか?送りますよ」


「えっ、いいの?」


「彼氏なんですから、そのぐらいの特権があってもいいと思いますが」



か、彼氏……


馴れない響きに恥ずかしくて俯いてしまう。



「萌?どうしましたか?」


「う、ううん、何でもないの!」



恥ずかしさを消すようにあたしは顔の前で手を振る。



「そうですか。じゃあ……」


「……?」



続きを言わない霧谷くんを不思議に思って顔をあげると、霧谷くんはあたしに手を差し伸べていた。



「手ぐらい繋いでもいいですか?彼氏の特権ということで」


「……っ!!」




あぁ……ダメだ。


あたしの顔、熱い……



「うん……」



そっと霧谷くんの手にあたしの手をのせると霧谷くんは優しく笑った。



霧谷くんの手……あったかいなぁ…



それから霧谷くんはあたしの家に着くまでいろいろな話をしてくれた。



「あ、ここなの、家」



見馴れた家に着くとほっとするのと同時に、なんだか寂しいような、複雑な想いが胸を占める。