霧谷くんの唇は温かくて、柔らかくて、甘くて……あたしにとって、初めての感覚……
そっと、唇が離れる。
……多分、あたしの顔、真っ赤だ。
霧谷くんは余裕そうな顔に笑みを浮かべてあたしを見ていた。
「僕も、萌のことが好きですよ」
………え?
「う、うそ……」
「嘘なんかついてどうするんですか」
くすくすと楽しそうに霧谷くんが笑う。
「だ、だって……」
信じられない……
ずっと、ずっと見てるだけだったのに。
遠くから、見つめて、想ってるだけだったのに……
なのに、そんな霧谷くんが、あたしのことを……?
「どうして泣くんですか」
呆れたように笑う霧谷くんに言われて、あたしは自分が泣いているのに気づいた。
「…だっ、て……っ」
嬉しい…凄く、嬉しい。
「泣かないで下さいよ」
ポロポロと涙を流し続けるあたしを見て、霧谷くんは少し困ったように笑う。
「……っ、すき」
伝えたい。
「……好き。…っ、大好きです」
ちゃんと、もっと、伝えたい。
「あたし、霧谷くんのことが、大好きです」
まだ涙は止まらなかったけど、あたしは精一杯の笑顔で霧谷くんを見た。
「知ってますよ」
そっと、霧谷くんはあたしの頬を包む。
「僕も、好きです」
そう言って霧谷くんはあたしの瞼に優しくキスを落とした。
何度も顔に落とされるキスに、だんだんとあたしの頭はぼぉー、っとしてくる。
「目を閉じて」
目……?
ぼぉーっとした頭では深く考えられなくて、あたしは霧谷くんの言う通りに目を閉じた。
「……んっ」
ふわり、と霧谷くんの香りがして、唇に柔らかい感触を感じた。


