その顔は酷く真剣で。
霧谷くん、お母さんに何を言うんだろう……
「いくら俺と二人っきりじゃないからって……何があるか分からないんですよ?」
……うん?
霧谷くんの言っている意味が分からない……
じゃあ霧谷くんと二人っきりだと何かがあるのかな。
お母さんは意味が分かっているのかにっこりと笑う。
「あら、流くんになら萌に手を出しても怒らないわよ?
避妊さえしてくれれば」
…………ひにん?
お母さんの言っている"ひにん"が"避妊"のことだと分かってボンッとあたしの顔が熱くなる。
「なっ、お、お母さんっ、何言って……!!」
「ストレートすぎたかしら?
でも流くんの言っていることってそういうことでしょう?」
そうだとしてももっと他に言い方あったでしょぉ〜〜〜っ!!
霧谷くんを見ると唖然というか……
うぅ……ごめんなさいぃ。
「もちろん、萌が嫌がってるのに無理矢理するのはダメよ?
でも萌ってこういうことに疎いから……
このままじゃ、いつまで経ってもおあずけになっちゃうわよ」
だから頑張って!とウインクをするお母さん。
霧谷くんが反応に困ってるからやめてよぉ……
でも、そっか……お泊まりってなるとそういうことも視野に入れて……ってこと、だよね?
あたしが、その、そういうことに疎いっていうのは分かってるつもりではある。
ゆっちゃんにも鈍感だって言われたし。
でも全く知識がないわけでもないんだよ。
保健の授業でやることぐらいは……知ってる、かな。
「萌」
「ふぁいっ!」
いきなり名前を呼ばれてビクッと肩が揺れる。
「そういうわけだから、お泊まり、楽しんできなさい」
あたしはお母さんの迫力のある笑顔と霧谷くんの顔を見て、真っ赤になりながら小さく頷いた。


