目で霧谷くんにごめんと伝える。
それが分かったのか、霧谷くんは少し微笑んで気にするな、というように微かに首を振った。
うぅ……霧谷くん優しいよぉ。
「あら、格好いい子ね」
霧谷くんを見てお母さんは一言。
…………それだけ!?
「お母さん、もっと他に言い方……」
いくらなんでも失礼だよぉ……
「はじめまして、萌さんとお付き合いしてる霧谷 流と言います。
こんな形で挨拶する感じになってしまってすみません」
「あらあら、そんなこと気にしないでいいのよ。
会えただけでも嬉しいわ」
丁寧に頭を下げる霧谷くんにお母さんは笑顔を返す。
「流くん?って呼んでもいいかしら。
いつも流くんの話を萌から聞いていたのよ。
ふふ……話通り、素敵ないい子ね」
「お母さんっ」
これじゃああたしがいつも家で霧谷くんのことしか話してないみたいに聞こえる。
これ以上恥ずかしいこと言わないでよぉ〜〜!!
腕を掴んで揺するとお母さんは少し剥れたような顔をする。
「そんなにならなくてもいいじゃない……仕方ないわね。
今度ゆっくり話しましょうね、流くん」
「はい」
うぅ……霧谷くんとお母さんが仲良くなってる。
お母さん、霧谷くんにヘンなこと言わないといいんだけどな。
はぁ、とため息をこぼしたときに優子さんがお母さんに話かける。
なんの話をしているのかな?
ちらりと目線をずらすと、霧谷くんも不思議そうにお母さんたちを見ている。
少しして振り返ったお母さんの顔はきらきらと輝いていて。
うぅ…なんか、ヘンな予感が……
「萌、クリスマスに誘われているのならせっかくだから行きなさい」
「え?」
あれ、どうしてその事……
目をぱちぱちとして不思議そうにするあたしに、お母さんは今優子さんに言われたのよ、と言う。
うん、納得。


