「き、霧谷くん……?」
一体どうした?
あたし、何かした??
「すみません。なんか……桃園さん、かわいいですね」
「かっ!?」
か、かわいいっ!?
あたしがっ!!?
「はい。かわいいです」
「………っ!!」
カアァ、と顔が赤くなる。
「うさぎみたいで」
しかもう、うさぎ!
あたしそんなにかわいい生き物じゃないですけど!?
「逃げるところとか」
「へ?」
くすくすと笑いながら、霧谷くんは確実にあたしの方へと歩みを進める。
あたしはその度、一歩ずつ後ろに下がる、が……
とん、と背中に固い感触がする。
「あ……」
「もう、逃げるところがないですね」
くすくすと、相変わらず楽しそうに霧谷くんは笑う。
「う………」
ダメだ。今の霧谷くんはあたしにとって目の毒だ。
「捕まえましたよ?」
「………っ!!」
とん、と霧谷くんはあたしを囲むようにその手を壁についた。
ひ、ひゃあぁ〜〜〜〜っ!!
ちちち、近いっ!!
あわあわと意味不明な動きをする。
頭は真っ白で心臓はバクバクだ。
「さっき、僕が言ったこと……覚えてますか?」
「ふぇっ!?」
いきなり聞かれたのでびっくりしてぱっ、と顔をあげる。
恥ずかしくてまたすぐ俯いたけど……
「人が話をしているときは、相手の顔を見るのが礼儀ですよ?」
「うっ……」
うー……これは霧谷くんが正しい……
心臓をできるだけ落ち着けてから、おずおずと霧谷くんを見上げた。
「よくできました」
間近に霧谷くんの顔があってカアァ、と頬に熱が集まるのが嫌でも分かる。


