「玄関が騒がしいと思って覗いてみたの」
「えっ、そんなにうるさかった?」
「ふふ、冗談よ」
冗談なの!?
うぅ……我が母ながら何を考えているのかよく分からない。
「萌、そちらは?」
玄関から出てきたお母さんは優子さんの車を見て不思議そうに首を傾げる。
「あ、えと……送ってもらって」
「あらあら、そうなの?」
少し目を見張ってからお母さんは優子さんに向かってにっこりと笑顔を見せた。
「はじめまして、萌の母の繭(マユ)です」
送って下さってありがとうございます、と頭を下げるお母さんにあたしも慌てて頭を下げる。
「いいえ。こちらこそ、こんな遅い時間になって申し訳ありませんでした。
息子にも今後、こういうことがないように言い聞かせますから」
「息子さん?」
お母さんはそう呟いてからあたしに向かってきらきらした瞳を向ける。
ななな、何?
お母さんがこの目のときっていい思い出がないような……
「まぁ!萌ったら噂の霧谷くんのところにいたのね」
「なっ……!」
う、噂のって!!
霧谷くんにヘンな誤解を抱かせるようなことを言わないでよぉ。
「ちょっと、お母さんっ」
「恥ずかしがらなくてもいいじゃない。
あ、後ろに霧谷くんいるの?
一度顔を見せてくれないかしら?」
「お母さんっ……!」
なんて図々しいことを言っているの〜〜〜!!
なんとかお母さんの行動をやめさせようとするけど、できるはずもなく。
霧谷くんはいつもより少し固い顔をしながら車から下りてくれた。
うぅ……申し訳なさから泣けてきそうだよぉ。


