「あれ?優くん、いつ帰って来たの?」
確かあたしが霧谷くんと一緒に来たときにはいなかったよね。
あたしが寝てる間かな。
「ついさっきです。母さんと買い物行ってたんで」
「お買い物?」
「はい。今、冬物の服で安くなってるとこあったんで」
「そうなんだ」
それは男の子の服か女の子の服かどっちなんだろう、と思っていると、優くんがくすりと笑った。
何が面白いのか分からなくてあたしが首を傾げると、優くんがにやりとした笑みを浮かべる。
「いやぁ〜、母さんが兄貴が女の子襲ってる〜って、叫びながら階段下りてきたときはびっくりしましたよ」
はっ、そういえば……!!
た、確かにそう言われたよね……思い出さないようにしてたのにぃ……!!
考えちゃダメだと思うけど、意志とは裏腹に記憶は鮮明に瞼の裏に甦る。
うぅ…顔熱いぃ……
「うわ、萌サン顔真っ赤。兄貴、何してたんだよ」
「なんでわざわざ優に言わなきゃ駄目なんだよ」
「兄貴のケチー。ま、予想はつくけどね」
よ、予想ついちゃうのっ?なんでっ?
うわあぁ…本当だったら恥ずかしいよぉ。
頬に手を当ててこもった熱を冷ます。
……でも、全然冷めた気がしないよぉ。
「こーらっ、萌ちゃん困ってるわよ」
大丈夫?と声をかけてくれた優子さんに曖昧に笑みを返す。
「あら、もうこんな時間。萌ちゃんは家どこ?
送って行くわ」
「え?そんな、いいですよっ」
断ったけど結局優子さんには勝てなくて。
車で送ってもらうことに……
有無を言わさないような感じが霧谷くんにそっくりで、ちょっと笑ってしまった。


