サアァ、と体温が下がるような感覚。
「萌?」
「どど、どうしよう霧谷くん……!」
どうしよう…どうすればいいの!?
やっぱり謝るべき?
それともまずはお邪魔してますと言うべき?
その前に霧谷くんとお付き合いさせてもらっています、って自己紹介をするべき?
あたし、どうすればいいのっ!?
いきなりの状況にパニックになって、涙を浮かべるあたしに、霧谷くんが焦ったような顔になる。
「ちょっ、萌、落ちついて」
「だ、だって……」
ぎゅっと霧谷くんの袖を握る。
「だって、霧谷くんのお母さんにあんなところ見られて……
こんな第一印象のか、彼女じゃ……霧谷くんにつり合わないって、思われないかな……っ?」
目に溜まった涙がこぼれるのを見られたくなくて俯く。
ぎゅっと握りしめた袖は、ちょっとだけ力を緩めた。
「ちゃんと、ご挨拶したかったのに……
ふ、不埒な彼女だと思われたらどうしよう……っ」
「不埒って……」
あの場合の不埒って俺に当てはまるんじゃないの、という呟きはあたしの耳には入ってこなかった。
それよりも"どうしよう"という言葉がぐるぐる頭の中を回っていて。
「大丈夫だから」
「でもっ……」
顔をあげたあたしに、霧谷くんは不意打ちでちゅ、とキスをした。
あたしは驚いてぱちぱちとまばたきを繰り返す。
「……へ?」
びっくりしすぎて涙も引っ込んだみたいで、視界がクリア。
「大丈夫だよ、萌なら」
正面からぎゅうっと優しく抱きしめられて、ドキッと心臓が跳ねた。
「だって、萌は俺が好きになった女の子だし」
「り、理由になってないよ……」
でも、さっきよりちょっと頭の中も落ちついたみたいで、体の力も抜けた。
おずおずとあたしも霧谷くんの背中に手を回す。


